「上杉さん、私……両親にちゃんと自分の気持ちを伝えたかったんです。だけどうまく伝わらなくて……」

「そうか……」

彼の手はずっと優しく私の背中や髪を撫でたまま。

「それで逃げてきちゃいました。……こんな自分、大嫌いです」

お父さんとお母さんに伝えたいことがもっとたくさんあった。ふたりを悲しませたくなんて、なかったのに……。

後悔でいっぱいになっていると、急に上杉さんは私の頬を包み込んだ。
びっくりして顔を上げると、彼は真剣な面持ちで私を見つめていた。

「大嫌いだなんて言うなよ。……俺は麻衣子自身が嫌いなところも含めてお前のことが好きなのに」

「上杉さん……」

ジッと彼を見つめていると、上杉さんはふわりと笑った。

「それに麻衣子は頑張ったじゃないか。一度っきりですべてがうまくいくとは限らないだろ? ……ゆっくりでいい、ご両親に自分の思いを伝えていけばいいんだ」

優しい言葉にまた涙が零れ落ちた。その涙を指で拭いながら彼は続ける。