両親がいる手前、お見合い中はずっと口を出せずにいた。だけど今はその両親はいない。疑いめいた目で聞くと、彼はまた笑顔を見せた。

「せっかくふたりっきりになれたし、庭園でも散策しようか?」

上杉さんとふたりで散策? そんなのするわけないじゃない!

「しません!」

すぐさまきっぱり拒否すると、彼は「クククッ」と喉元を鳴らして笑う。

「やっとしゃべったな。ずっと口を閉じたままだったから、人形かと思ったよ」

「なっ……! バカじゃないですか!?」

人形だなんて、そんなことあるわけないじゃない。

ついムキになって言い返すと、今度は声を上げて笑った。

「アハハッ! そんなムキになるなよ。冗談も通じないのか?」

「……っ!」

なにも言い返せず、悔しくて唇をキュッと噛みしめた。

だめだ、一度落ち着こう。完全に彼のペースに翻弄されているよね。

そう自分に言い聞かせて一度深呼吸をする。そして余裕ありげに微笑む彼と対峙した。