「嘘だろ……?」
「本当だ」
次の日の放課後、俺は頭髪服装検査を受けていたんだけど……山田先生にとある指導を受けた。
「前髪が長い!」
「だから、長くない。どれが長いの!?」
「これ」
「1本だけじゃん!」
「1本でも前髪が目にかかったらダメ!」
「厳しいなぁ……」
俺と山田先生は、こんなやり取りをしていた。
そう。山田先生は、前髪が1本でも目にかかっているだけで「ダメだ」と言ってくる、厳しい先生なんだよね……。
「明日、見せろよ」
「はいはい」
俺は山田先生から離れると、入口付近で本を読みながら立っている秀に声をかけた。
「お待たせ」
「おかえり」
俺は秀に笑いかけると、秀は目を細めた。「どうしたの?」と問いかけると、秀は、俺の顔にそっと手で触れる。秀の手が暖かい……。
「……顔、赤いよ」
俺は、その言葉に鼓動が早まった。ともえのことが頭から離れない。
秀は、俺に触れていた手を離し、「気分悪くない?大丈夫?」と心配そうな顔を見せた。
「大丈夫だ……実は、ともえのことが頭から離れなくて」
カバンに本を入れる秀に、俺は相談をするために話しかける。
「なるほど……それ、恋って奴じゃないかな……」
秀は、俺を真剣な顔で見つめる。
「そうかな……」と呟くと、秀は「そうだと思う」と言って微笑んだ。



