パン屋に着くと、ユキくんは
おばちゃんに困り顔で
問題のパンを差し出す。

「おばちゃーん…
このあんパン
カビに食べられてました。
変えてください!」


…ぷっ!!


どういう言い方よ。


心の中で突っ込みながら、
私は聞いていた。


「あら!ごめんね、お兄ちゃん!
すぐ持ってくるね♡」

そう言うと笑顔で、
パン屋のおばちゃんは
代わりのパンを取りに行った。


「ごめんね〜。
お待たせしました。」

戻ってきたおばちゃんが
申し訳なさそうに
パンを差し出す。


「ううん、ありがとう!」


自然に繋がれていた手が
パンを受け取るために、
すっと離れる。


あ…手、繋いでたんだった。


手を意識していなかった私は
途端に恥ずかしくなって
頬を赤らめた。


ーーちょっと私、なに後輩に
ドキドキしてるのよ…