いつの間にか、ユキくんが
部室に来ていた。

「モモ先輩!?
もう来ないんですか?」

「え、うん。」

驚き6割、悲しみ4割……
といったところだろうか。

何とも言えない声をあげる彼。


書道部では例年、部長は引退後も
引き継ぎや見守りも兼ねて
冬頃までは来るのが
慣行のようになっていた。

私もそうすると思っていたのだろう。

でも進学希望だった歴代の
先輩方と違って私は…


「先輩…就職ですもんね。」

「そうね。」


垂れ下がった尻尾が見える…

肩を落とし、見るからに
シュンとしているユキくん。


私も来たいのは山々だけど、就職の
準備に忙しくて到底できそうもない……


「ごめんね、次期部長。
でも代わりに
副部長が来てくれるから。」

「そこに落ち込んでるんじゃないです…
モモ先輩のバカぁ!!」

突然、目の前に発生した
"5歳児"が駄々をこね始めた。

…しかも、バカって。