好きな人とキスやハグをたくさんする甘いだけの青春ではなく、少年漫画のような冒険や熱気にあふれたものがいい。そう華は望んでいる。

高校二年生の夏休み、華は友達と二人で好きな歌手のコンサートを観に行った。最近イケメンで話題となっている歌手だ。

「スタイルいいし、すっごいイケメンだし!あんな男子に口説かれたい…!」

友達は漫画なら目がハートになっていただろう。この歌手を好きになったきっかけは?と訊ねた時、友達を含め多くの女性が「顔がかっこいいから」と答える。

「華も何だかんだ言って、顔に惚れたんでしょ?」

「そんなわけないよ!私はこの人の作る歌詞に惹かれたの!」

繊細で美しい詞に、華は心を打たれた。男は嫌い。だが、音楽や芸術などは性別など関係ない。

音楽などあまり聴かない華が、唯一聴く音楽だ。生まれて初めて行くコンサートに、華の胸が高鳴った。

コンサート会場は、男女問わず人であふれている。この歌手は性別を超えて愛されているのだ。

「グッズせっかくだし買おうよ〜!」

友達がはしゃぎながら言う。その先には、先が見えないほど人が並んで列を作っていた。その光景に華は目を丸くする。