【10月10日(土)】
圭さんは大学の同窓会に出席するため、1泊2日で金沢へ行った。私は受験勉強があるので、当然お留守番。圭さんがゆっくり勉強できるように気を使ってくれたのだと思う。

出かける前に「昔の彼女に会いに行くの?」と聞いたら「うーん」と言って「誰が出席するか行ってみないと分からない」と言っていた。

卒業してから10年経っての初めての同窓会らしい。皆がどうしているかちょっと知りたくなったとか言っていたけど、本当は昔の彼女がどうしているか気になっているのかもしれない。

圭さんは昔のことはあまりしゃべらない。私と同じで、良い思い出がないのかもしれない。だから私も聞いたりしないことにしている。

そういえば、初めての夜、圭さんはプロの女性との経験は結構あったけど、素人の女性は美香ちゃんが初めてだったといっていた。

女性の扱いに慣れている感じがしたから、きっと本当だと思う。それを聞いてうれしかったけど、ちょっと不思議だった。圭さんみたいな良い男を周りの女性がほっておくはずがないと思ったから。

でも、確かに圭さんの部屋には女の人の痕跡が全くなかったから、深い付き合いをした女性は居なかったのだと思う。学生時代に何かあったのかもしれないけど、今の私にはかかわりのないこと。圭さんから話すまで聞かないでおこう。

受験勉強を夜遅くまで頑張った。でも、一人で寝るのは寂しい。同居後しばらくして、泊りがけの出張が2回あったけど、結婚してからは1回もなかった。毎晩そばで寝てくれていた。

一人になって、圭さんが私の中でどんなに大きな存在になっているのか、大事な人なのか良く分かった。早く帰ってきてほしい。

【10月11日(日)】
早起きして、家事を済ませて、勉強をはじめる。是が非でも期待に応えて合格しなければならない。それが圭さんへの恩返しにもなる。

1時過ぎに圭さんからメールが入る。駅弁と「あんころ」を2つずつ買ったので、晩御飯は準備不用の連絡。ありがたい。

5時ごろ、ドアのかぎを開ける音がする。玄関にとんで行く。

「おかえりなさい」

「勉強はかどった?」

「まずまず。でもそばにいないと今頃なにしているのかと返って気になって。同窓会どうだった。昔の彼女に会えた?」

「皆、元気でやっているみたい。自分も結婚を報告しておいた。でも結婚相手が女子高生だとはとても言えなかった」

「本当のところを報告すべきだったと思うけど」

「そうだ、羨ましがられるように報告すべきだった。でも同窓会に出てよかった。これで学生時代の思い出とさよならできそうだから」

「どんな思い出?」

「ほろ苦い思い出だけど、もう忘れた。それよりも美香ちゃんを抱きたい」

「うれしい」