「そういえば部長」
「なんだね?」
また男が部長の方へと振り返った。
まだなにか?と部長の後に続いて私も心の中で彼に問う。
彼はしれっとした顔で
「来るときに聞こえちゃったんですけど、5000万の契約白紙になったんですね?」
と部長に問いかけた。
いや....
聞こえちゃったどころか盗み聞きじゃないのーー!!!!
大丈夫かこの人!ドアノック事件の次は盗み聞き事件か!というか今これ部長に話しちゃいけない話題でしょ!盗み聞きしてたなら部長がどんだけ怒ってたか知ってるでしょ!怖いもの知らずにも程があるわ!!!
「あ、ああ...」
「部長、責任どう取るんだって言ってましたよね?」
「ああ」
「取りますよ、責任」
え?
「え?」
その場に居た全員が顔を彼の方に向けた。
な、なに言ってるの?この人。
責任って全く関係ないのに?しかもどうやって....。
「5000万の契約とるのに半年掛かったんですよね?」
そう言って彼は私の方を見た。
....これは私に問いかけてるのか。
「はい。」
「なら半年....いや、4ヶ月で取って見せましょう。1億。」
「「「え?」」」
再び部長、城内さん、私が彼に注目する。しかもご丁寧にハモリ付き。
「い、1億!?それも4ヶ月で!?いくら君でも無理に決まってる!それに取れなかったらなんの責任を取った事にもなっていない!」
これには部長も反論の余地ありのようだ。
確かに。5000万の2倍、かつ2ヶ月短縮してどうやってとるのか。現実性があまりにも欠乏している。


