「えっと、これは...?」
「来年に発売予定の医療用ロボットの資料だ。」
「あ、これが噂の...」
今は夏に発売のロボットに重点しているが、それが終われば医療用ロボットの営業に取り掛かると聞いていた。私の部署の一部の人間はこの営業準備に取り掛かっているけど、私はまだこのロボットの大まかなパンフレットしか見た事がない。
「このロボットで取るぞ、一億。」
「え!?」
てっきり今取り組んでるロボットで営業すると思っていた私は驚く。
「まだこのロボットは正式に営業を開始していない。開発発表はしたけどな。その分取りやすいだろう。」
「いや、それ結構せこくないですか...?須々木部長だって夏発売に向けてだと思ってますよ、きっと。」
「誰もなにで一億とるなんて言ってないだろ?」
なるほど。最初っから夏に向けてでは無かったって事か。確かに、あと3ヶ月で発売の商品で一億取るよりはまだましな気がする。それでもほんの少しだが。それに確か、この医療用ロボットって業界初の試みだった気がする。飲み込んで治療するとかなんとか...。
いずれにせよ、まだ営業を本格的にしてない商品だからと言って、簡単な訳ではない。なんならデメリットだってある。その大きな1つに、
「私、このロボットに関しての知識は皆無と言って良い程なんですが...。なんなら医療知識だって無いですし...。」
知識不足。そもそも売る側に知識が無いというのは致命傷以外のなにものでもない。どちらにせよこれから勉強しなければいけないとはいえ、4ヶ月という縛りのなかでの勉強は物凄く限られている。だったら今年の夏発売のロボットの方が、知識は豊富にあるし、そちの方がいくら色んな所に営業に行ってるとはいえ、まだなんとかなると思うのだけど...。


