「じゃあ、資料はコピー出しといた。念のため確認よろしくな」
「あ、ああ。本当にありがとう。助かりました。」
私も立ち上がり頭を下げてお礼する。
なにはともあれ、この男が居なければ会議に間に合わなかったかもしれないし、感謝してもしきれない。
頭をあげて男を見ると、男はニコっと微笑んで私の頭に手を置いた。
「会議、頑張れよ」
「っ...」
男は1、2回ぽんぽんと私の頭を撫で、オフィスから出て行った。
手を置かれた部分が一気に熱帯びるのが分かる。
「な、なんなのよぉ....」
嫌味の1つや2つ、言われると思っていた。
どうやら男はいささか距離が近いというか、スキンシップが激しいらしい。
これまで仕事ばかりで、あまりそういうのに慣れていない私にとっては悪条件だ。
これからいちいち今みたいに動揺させられると思うと、心配にさえなる。
「また名前聞くの忘れたし。」
なんなら部署より、名前を聞くのが先だっただろ!っと自分に突っ込み、自分のパソコンの画面を見る。
ーーとりあえずこいつらをなんとかしないと。
私はまた業務に戻り始め、次第に謎の男の言葉は忘れていった。


