「ふう...」
AM8:15
それまで一言も発さなかった彼がため息をついた。それと同時にガシャっと動きだすプリンター。
最初は動揺していたものの、いざパソコンに向かうと隣に居る男は気にならなくなっていた私は、そのプリンターの音にハッとして横を見る。
男はパソコンをシャットダウンしている最中だった。
「え、もう終わったの?」
「ああ。そっちは?」
「まだ。ただ会議までには終わりそう」
そうかそうかと相づちを打ってあくびをする男。私も打ち込みには自信があるけど...。仕事は出来そうだと前から思っていたが、実際、効率の良さにしろ、それを目の当たりにして驚く。
そんな私に見向きもせず黙々とその場を片付けている。
「あのさ、」
ん?と私を見る男。
「そういえば、あなた、部署どこなの?」
何だかんだ自然に話してたけど、私はこの男の部署を知らないのだ。本当に今更だけど。
すると男はクククっと笑いながら、その内分かるよ、と言われた。
「その内分かるって、今教えてくれてもいいじゃない。なんで隠してるの?」
「隠してる訳じゃ無いんだけどさ。本当に直ぐに分かると思う。」
「意味が分からないんだけど。」
「逆に、何だと思う?俺の部署」
「...人事部とか?私の家知ってるし」
そういうと、またクククと笑い出した。何がおかしいのかさっぱり分からない。
「今日中に、その答え合わせ出来るよ、多分」
「え、」
そう言って男は私の質問に答え無いまま、パソコンを鞄にしまい立ち上がった。


