復習したい


黙り込んでしまった私を見て、男はふっと顔を和らげて私の顔を覗き込んだ。


「確かに難しいかもしれないけど、可能性はゼロじゃない。」


そして男は少し力のこもった声で続けた。


「俺はこの会社を辞める気なんて更々ないぞ。」

「え?」

「勿論ちゃんと1億取って、納得させた上でな。」

そう言った彼の表情は自信に満ちていた。私はその自信はどっから湧くんだと思う反面、その壁に立ち向かうのを楽しむかの様な姿を羨ましいとも思った。

私にはもう棄てた感情...。

「それに、これを成功させたとしたらメリットはでかいぞ」


「メリット?」


「少なくとも、昇進は出来るだろうな。あと今年の社長からの表彰も間違い無し!それともう一つ、お前にとって相当良い事がある」


「相当良い事?」


「1億の契約を取ってくれば、部長も認めざる得ない。つまり、もう部長からの小言は言われない。いや、言わせないが正しいか?」


「た、確かに...」


須々木部長、ミスした時でもなんでも無く、会議の時とか事あるごとに突っかかってきた。特に私が主任になったここ一年は酷かった。それが無くなるなんてかなりのメリットかもしれない...。