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「ちょ、ちょっと待って!」
私は部長にもう一度謝罪をし、じゃあ決まりですねと言って去って行った男を急いで追いかけた。
「はい?」
「はいじゃないわよ。勝手な事散々言いまくって。」
一呼吸置いて続ける。
それは私が1番気になっていた事。
「1億、取れる見込みがある所でもあるの?」
あんだけ大口叩いてたんだから、どこかめぼしい所でもあるのだろう。じゃないとあんな勝ち目の見えない勝負、こっちからふっかけるなんてとんでもない。
所が彼の口から出た答えは、予想とは全く真逆だった。
「見込みね〜。全くないな。」
そう言って私の方に顔を向けた男。今日この男と会って、初めて顔をしっかりとみた。
横顔だけでも美少年だと思ったが、真っ正面から見ると、更に顔が整っていて迫力さえもあった。
....じゃなくて!
「み、見込み無いって、どうすんのよ!しかも期間もアホみたいに短いし!」
「あの場から助けてやったんだから文句言うなよ」
「助ける!?状況が悪化したとしか思えないわよ!職を失うかも知れないのよ?」
「...じゃあ逆に聞くが、あの状況でお前はどうした?」
「っ....」
「あの部長なら責任を取って辞めろって言うに決まってる。例えあの場を切り抜けたとしても会議とか、普段の業務とかでとことん大事にして追い込んでくるだろ」
....なにも言い返せなかった。
須々木部長を良く熟知している。なにより私があの場で謝る以外どう対処すれば良いのか分からなかったのを彼は見抜いていたのだ。


