部屋を開けると、ドアから少し離れた位置に仰向けになって意識を失った美咲がいた。





『美咲ちゃん、美咲ちゃんっ!』




体を揺するが反応はない。すぐに病院から持ってきた聴診器で胸元を聴診する。
と同時にまきが美咲の脈を測る。






聴診をしながら美咲の額に手をやると、





『熱いな…唇も乾ききってる。』






『…み、美咲にお茶を持って来たんだけど、一口も飲んでないかも……。』






父親の行動で察したのか、ありさが答える。





『体温計とって。』





まきが美咲の脇に体温計を差し込んだ後、エプロンのポケットに入っている携帯を取り出しすぐさま救急車を呼んだ。





『脱水と……熱中症かもしれない。』





そう、美咲はこの炎天下の中、帽子も日傘もなく走ってきた。脱水症状で倒れて回復してない体のまま……。





『しまったな……俺がもっと考えてれば。』






数時間前に、美咲を厳しく問いただしたことを後悔していた。






『美咲ちゃん、色々と一人で抱え込んじゃう子だからね、昔から……。
きっといっぱいいっぱいになっちゃったのよ。




だからと言って、あなたは医師として間違ってないわ。』





昔から美咲のことを、ありさと同じように可愛がってきたまきは、美咲を充分に理解していた。
そして、かつて夫と同じ病院で働いていたまきは、夫をしっかりとフォローする。




『美咲ね……、高校行ってから大変だったみたい。そのことを美咲のパパに知られたくなくて、心配かけたくなくて重ねた嘘が大きくなってしまって、結果みんなを裏切ったって、すごく後悔してた。





それと同時に……。もう今までの生活が……、自分の体を考えて制限された生活が、すごく嫌になっちゃったんだって……。





今まで、ずっと頑張ってきた美咲が、もう頑張れないって泣いてるの見て、相当色んなことを我慢して、溜め込んでいたってわかった。





美咲、大丈夫かな……。』






ありさは、この後美咲が必ず意識をもどすことを確信していた。
心配していたことは、その後のことだった。






そんなことを話していると、すぐに救急車が到着して、美咲はありさの父と共に病院に向かった。