こんなにも苦しくなったのは初めて…。
いつも自分でなんとかしてきたのに、今日はうまく落ち着かせることができなかった。
『結構、ひどい過呼吸だったね。』
真剣な表情の田中先生。
聴診器を首にかける。
『今までもこういうことって、あったの?』
本当はずっとずっと前からで、いつから始まったのかも分からないくらい。
言えることは1つ、ママがいなくなってから……。
でもそれはパパに知られたくない。
私がママのことを一人で苦しんできたなんて知ったら、パパはもっと、辛いだろう。
そして首を振る……。
『そうか…。』
また1つ、田中先生に嘘をつく。
しょうがないよね……。
私にだって、守りたいものがあるんだから。
すると遅れて入ってきたのは担当医の藤堂先生と、担当の看護師さん。
『田中先生、ありがとうございました。』
すぐに私を見る。
『さっきまで何ともなかったのに、どうした?』
どうしたって?
先生が私の思い出したくない過去を口走るから……。
黙っておいた。
そんなこと言えないから……。
『もう落ち着いてるけど、二度息苦しくなってね。
一度は自分で落ち着けたけど、二度目は時間がかかって。
今呼吸も脈も正常になってるから。』
田中先生が藤堂先生に伝える。
それを看護師さんがメモに控える。
それだけ伝えると、田中先生は部屋を後にした。
『どうした?食事はまだ?』
食器の蓋を外して確認する。
もう時間が経ってるから食べられないかもしれない。
『何も食べずに、大丈夫か?』
「はい…お腹が空いてないので。」
いや、そろそろ空いてきた。
だけどこんなドロドロは食べれない……。