『おはよう』
あれからずっも眠っていたようで、起きたら朝食と一緒に、藤堂先生が目の前の椅子に座っていた。
『おはよう。』
「おはよう…ございます。」
枯れた声で返す。昨晩、お茶だけ飲んで寝たから、喉がカラカラで声がかすれてる。
マスクは外れて、口元がすっきりしている。
『昨日はよく眠れたみたいだね…。』
昨日……そうだ、あの疑いはまだ先生たちのなかではモヤモヤしてるんだ。
だから、今もあの嘘を貫き通さなければ……。
寝起きで頭がボーッとしていて、本当のことを言ってしまいそう。
『昨日、食事を摂ってないようだね。』
うぅ、よくご存知で。
こういうことはチェックしているようで、油断できない。
「寝てる間にきたみたいで……。」
言いながらチラッと藤堂先生を見ると、目が光った気がした。
『ん?お茶は飲んであったけど。』
あっ……。
『食べてないだけでしょ。』
そう思うなら、そんな聞き方しなければいいのに。
イヤラしい言い方…。
『ほら、朝はちゃんと食べて。』
う……、どうしてこんなドロドロご飯を。
ララとファミレスでのご飯。
あんなしっかりした固形物を食べてしまうと、なんかとんでもなく食べる気が引けて嫌。
でも食べないと怪しく思われるし……。
『ほら……。』
食べろと言わんばかりに促す。
「ね、寝起きで食べられないですよ…。もう少し待ってくださいよ。」
何とか誤魔化す。
すると藤堂先生がいつもと違ってグッと暗い真面目な顔になった気がした。
『こういうご飯は食べたくないか?』
トーンが変わった気がした。
「そういう訳では……。」
問い詰められて静かなにると、今までに感じたことのないただならぬオーラが藤堂先生をまとい、暗雲が立ち込めている。
『なぁ、本当はどうなんだ?先日の夜に梶田先生が会った時、ファミレスでなんか食ったんじゃないのか?』
再び襲いかかる尋問……。
どこか私が正直に話しても許されるようなそんな聞き出し方。
でも、今更本当のことは言えない。
「食べてない!」
『本当は?』
「食べてない!」
『天に誓って言えるか?』
「うん!」
『仏様も?』
「うん!」
『お母さんにも?』
えっ!?
「……うん。」
なんでここでママのことを……。
ママは、この世にはいないから、ママがこれを知ることはない。
パパとずっと長いことやってきたのに。ママを思い出さずにやってきたのに……。
突然ママのことを思い出すと、対抗していた気分から、一気に気分が落ちた。
『分かった。』
そういうと気分の落ち込んだ私には気にも触れず、藤堂先生は部屋を後にした。
「なんで……、お母さんのことを。」