『美咲ちゃん?』
あぁ、あぁ、アァァァァァァ!!!!!
声の主を見上げると、そこには私の大好きな梶田先生がいた。
隣には友達なのか、病院の同僚なのか男の人と一緒に。
や、やばい……。
今のこの状況、絶対に見られたらいけないヤツだよ。
もしここでご飯を食べたことが藤堂先生に伝わったら……。
ただじゃ済まされない……。
「こ、こ、こんばんは。」
とりあえず挨拶して、何を考えているのか偵察。
『こんばんは。久しぶりだね。元気にしてた?』
とっても優しい笑顔。
私に突然会って、ちょっと驚いてる様子だけど、ここがどこだかまだ考えてないみたい。
「は、はい。おかげさまで。」
あぁ……これ以上何も聞かないで。
早く帰りたい!
そしてあまり建物を見ないでー!
『それは何よりだよ。』
あぁ、後ろ見たっ!
私がここから出てきたって気づかれた?
『ん?お友達と一緒?』
ララ〜!!
同じ制服をきてるから、私と入ってたこと、気付いちゃった……?
「そうです……。」
チラッとララを見る。お腹をさすって『満腹、満腹』と言わんばかり。
ララ……何も言わなくていいからね……。
『あ、どうも。こんばんは。』
ララが自然と挨拶する。
『美咲ちゃん……、こんなところに寄って食べられるものって……。』
ぎゃっ!気づかれた!
「わ、私はお茶だけ……。」
『え?』って顔のララ!
(これ以上何も言わないで!)
仲良くなって二日で、私に声をかけてくれて、ご飯まで誘ってくれた大事な友達に、ものすごい剣幕な顔を向けてしまった気がする…。
『ならいいけど……。気をつけて帰るんだよ。』
ふぅ……良かった。
「はい、ありがとうございます。」
不思議そうなララを引っ張って、そそくさと退散。
はぁ〜危なかった。
だけど疑いの目を向けられたのは確かだなぁ。最後は不審そうな顔をしてたし……。
しかし困ったな。
外食は本当はしてはいけないこと、ララに言うべきか……。
でもせっかくこんな私を誘ってくれたのだから、黙っていた方がいいのか。
ただ食べてしまったものはもうどうしようもならないから、どうすべきか……。
そんなことを考えながら途中ララと別れて、帰路に着いた。



