トントン




『……美咲、いい?』





「……うん。」





パパの問いかけに小さく返事をすると、パパが部屋に入ってきた。





部屋に入ってきたパパは、私の勉強机の椅子に腰掛けて、ベッドに座る私の顔を見た。





『……美咲、今日は辛い思いをさせちゃって、ごめんな。』






違う、パパが謝る前に……いけないのは私…






「ごめんなさいっ!」





結構大きな声が部屋に響いた。




ゆっくり顔を上げると、パパが驚いた顔してる……。





「プッ!」






それを見て思いっきり吹いてしまった。





『アハハハハハハハ!』






その私の吹き方にパパも思いっきり笑う。





「アハハハハハハハ!」






私もお腹を抑えて笑えば、パパも笑った。





緊張してた気持ちが一気にほぐれて、再び涙が溢れ落ちる。





そして再び静かになる部屋。





『……美咲。





今回のことは』




とパパが言いかけたところで、





「なしにしないで!」




また驚いた顔のパパ。






「パパがせっかく好きになった人なんだから……





それは、なしに……しないで。」







『……でも、美咲の気持ちだって……。』






「私の気持ちは……、









ママのことをパパが忘れてるのが怖かった……。」






恐る恐るパパの顔を見る。






『パパは……ママのことを忘れたことなんてないよ。





今でも、ママが生き返ってくれたら……って思うこともある。






……だけど、ママは生き返らない…。






そんな風に思えたのは、今から一年くらい前。





でも、美咲には家のことをしてくれる人が必要なんじゃないか。





入院中、お見舞いに行ったりお世話する人が、必要なんじゃないかって。






そんな時に出会ったのが、パパの紹介したかった人なんだ……』






そうだったんだ……。
私のことを考えてくれたんだ。





『だけどな、そういう人が必要だからと言って選んだ人じゃないんだ……。





その……な、』






「ちゃんとその人のことが、好きなんだね?」






『あぁ……そういうことだ…な。』






思いっきり顔を赤らめたパパの顔から、本当にその人のことを好きなんだって分かった。





「……わかったよ。パパの気持ち。





ちゃんとその人と向き合ってみたい。




パパが気に入った人だからさ。





きっと私も好きになれると思う。」






パパの大事な気持ちを聞いたせいか、向き合ってみたいだなんて、言いすぎてしまった……。





『……ありがとう、美咲。





急ぐことはないから、ゆっくり会うために進めていこうな。』






そういうと、椅子に座っていたパパは、私の隣に来て、ギューっと強く私を抱きしめた。





『美咲が、パパの子供で良かった。』






小さく呟いたその言葉を聞いて、思わず涙が溢れた。