『そういうことね。』





美咲の話を一通り聞いた藤堂は、納得したような顔をする。





「なので……今回の一時帰宅はしない。




こちらからお願いしておいて、ごめんなさい。」






珍しく美咲が素直に謝る。





『あのな、美咲。





美咲が入院してることや、たまに言う、いやよく言うワガママな言葉で、美咲を迷惑だなんて思う人はいないんだぞ。





美咲のお父さんは、美咲が病気と戦ってるのを知ってるからこそ、今回家に帰りたいと言った美咲の希望を叶えてあげたいと言って、お願いしてきたんだ。





美咲が家に帰ることを迷惑だなんて思う親がいるわけないだろ?』







うつむいていた美咲が顔を上げる。






「もう、いいの。
パパにも言ってあるし。それに私の気持ちも進まないし……。」






『もう一度ゆっくり考えて見ろよ。家に一度帰って、気分転換した方がいいって。
治療のことは考えないで、ゆっくりして来いよ。』







藤堂が声をかけてみるが、美咲は何も返事をしなかった。





再びうつむいた美咲の顔が上がることはなかった。