俺、男装少女だから。

『お願い。』



あの人が帰ってくるための目印だから。



「・・・分かった。
でも嘘は許せない。」



『・・・』



「隠すことと、嘘は一緒にしないで欲しい。
嘘は、自分を苦しめる。
俺はずっとそれを見てきた。」



あの汚い世界で。
付け足したリンの目はどこか遠く濁った瞳を見せた。



『リン。』



「那智も裏の世界にいたって昨日言った。
だから分かるでしょ?」



『あぁ。』



俺も見てきた。
もう何度も何度も。
自分が吐いた嘘で、苦しむ奴らを。



殺される奴もいた。
自ら命を絶った奴も目の前で見た。



「那智には、あぁなってほしくない。」



だから、とリンは言葉を続けた。



「嘘はつかないって約束して欲しい。」



俺を移すその目に、あの瞳はもうなかった。



『善処するよ。』



「那智。」



肌を突き刺すような視線と殺気を放つリン。