俺、男装少女だから。

『買い物行く時間になったら呼んで?』



部屋にいるから、と付け足してリビングを後にする。



背後に感じた何か言いたげな視線は、見て見ぬをした。



こうやって、高くて厚い壁を作り上げていく。
絶対に登られない、壊されない、見えないものを。



『はぁ。』



なんて、入学式前に決め込んだ訳だが。
思いの外、相手を傷つけることになるし自分の心にもキツいところがある。



ベッドに寄り掛かって、床に体育座りする。
抱え込んだ腕に顔をうずめる。



自分の目的のために人を傷つけることは間違えてる。
そんなことは分かってる。



トントン



「那智、俺。」



・・・俺じゃ分かんねぇだろ。



『どーぞ、リン。』



山にしていた足を伸ばして、ドアに顔を向ける。




『もう行く時間?』



「まだあと30分くらい。
その前にさっきの続き。」