俺、男装少女だから。

「んでそんなマヌケな顔してんだよ?」



ピクリ 上げていた頬が引き攣る。



『それはどーゆーことかな?』



「そんまんまだろ?
何言ってんだてめぇ。」



『はい、頭にきたー。
大体コウキだっt』



「そこまで。
本当2人は仲良すぎて大変だな。
・・・それで那智。なんで深刻そうな顔してたの?」



火がつく前にしっかり止めに入ったのはやっぱりカエデ。


『バイト行ってくる。
今日、忙しい筈だから。』



手に持っていたスマホをポケットに突っ込む。
財布は要らないか。



そのままリビングを出て行こうとすれば「待って」と止められる。



『な〜に?』



カエデの座っているソファーに顔だけを向ける。



「大丈夫なんだよね?」



何が、なんて聞かなくてもわかる。



『へーきだよ。
行ってくるね。』



右手をヒラリとさせてリビングから暗い廊下へ進む。