俺、男装少女だから。

「あ?那智じゃねぇか。
携帯うるさかったから勝手に出た。」



キッチンの奥にいたコウキがコーラを片手にやってきた。
申し訳なさそうに俺をみるコウキは珍しく素直に「ごめん」と謝った。




『だいじょーぶ。
電話の相手、なんか言ってた?』



「すげー慌ててたぞ。
俺が寝てるって言ったら安心してた、親父かってくらい。」



『あ〜。』



目に見える。
焦って何言ってるのか分からない矢崎の姿が。



「今日はバイト来なくていいから、休めだと。
伝言だ。」



ふと昨日見た予約リストを思い出す。
昨日キャンセルした警察の奴らが今日入ってたような。
だとしたら、忙しいはず。



「おい?那智??」



『あ、ごめ〜ん。』



急に黙りこくった俺を不思議に思ったのか、肩をポンと叩きながら顔を覗き込んできた。



「大丈夫かよ。
体調わりぃんじゃねーの?」



『いや?へーき。』



いつもより沢山寝たんだ。
体調は全然悪くない。