柏木くんは、ジトッと私を睨んだ。
逆らったらさらに不機嫌になりそう。

ちぇっ、まだ楽しみたかったのにー……。



「じゃあ、ズバリ、柏木くん。
今好きな女の子はいますか」

「うん、います」



不機嫌そうな顔でそう言った彼に、私は目を丸くした。



「え」

「はい終わり。終了。これ以上の質問は受け付けませーん」

「あっ、ズルい!私知らなかったんだけど!?」



まさか、柏木くんに好きな人がいたとは……。



「すぐに言ってくれれば良かったのにー……」

「自分から言えるわけないだろ、ばか」

「もーっ。ていうか!だれ?君の好きな人!だれ!?」

「……だーかーらー」



いきなり、パシンッと物理の教科書で私の頭を軽く叩いた柏木くんは、



「質問終わり。ついでに授業も、な」



そう言って、悪戯っぽく笑った。



授業の終わりを知らせるチャイムが鳴る。

柏木くんは、カバンを持って早々に帰って行った。