「ねーねー、柏木くーん」

「なにかなー、三木さーん」



机の上で頬杖をついて、前の席に座っている柏木くんの名前を呼んだ。

本日最後の授業、6時間目の物理は、先生の体調不良により自習になった。

教室はみんなの話し声で少し騒がしい。

私の声に、柏木くんはこちらを振り返らずに返事をする。



「あのねー、私今やることなくてさー」

「んー、新井のとこいけばー?」



"新井"っていうのは、私の親友のこと。
あだ名はみっちゃん。新井美祐(ミユウ)だから、みっちゃん。

まぁ、柏木くんの言う通り、確かに今は立って席を移動しても怒られないんだけどさ。



「みっちゃん今日早退したんだよー。推しのライブに行くんだってー」