彼はあたしの中でヒーローなのだ。
ちょっと癖のある黒髪に、ぱっちり大きな目。
健康そうに焼けている肌。
背は聖よりは低いけど170cmもあって、十分背が高い。
勉強もできるけど運動が得意で、特にサッカーが好きみたい。
誰にでも分け隔てなく優しくて、いつもいい香りがする。
まさに、"爽やか王子様"。
なんの接点もないように思うけど、実はあたしたちは隣の席で、仲良くさせてもらってる。
最初は全く興味が無かったんだけど、だんだん早川くんのことが気になってきて、今ではあたしの好きな人。
このことを聖に話したら「応援してあげる」と言われた。
そのおかげであたしたちは仲良しになれたのだ。
「あ、新木と藍田おはよう」
おはようだけなのにあたしは緊張しちゃう。
カンちゃんは「おはよう」なんてすんなり返しちゃってる。
あ、あたしも言わないと!
「お、おおおはよう!今日もいい天気だにぇっ」
か、噛んだーーーー!!!!
恥ずかしい!!!
助けを求めようとカンちゃんを見ると、必死に笑いを堪えてる。
それに早川くんも!!
ちょ、ちょっとーーーーー!!!
あたしは真っ赤になった。
すると早川くんが言った。
「ごめんごめん、あまりにも新木が可愛かったからさ」
そう言って爽やかな笑顔をあたしに向ける。
って、えぇぇぇぇぇぇえ!?!?
あ、あたしのこと可愛いって言った!?!?
あたしはもっと真っ赤になるし、カンちゃんはもう笑いを堪えられずに噴き出すし、早川くんも「あっはっは」なんて笑ってる。
そんなたわいもない日常が嬉しくて、あたしも笑ってしまった。




帰り、いつものように聖と帰ろうと思って聖の席に行く。
あれ、聖の様子がなんかおかしい??
なんか元気がなさそう。
「聖ぃ?」
反応がない。
「ねぇ聖!」
あたしが大声を出すと聖はびっくりしてこっちを見る。
「あ、ごめん葉月。帰ろう」
一体なんだったんだろう。
その"聖が変な理由"をあたしはもうすぐ知ることになる。