僕は医者になるのが夢だった。
理由は少し言いにくくて恥ずかしい。
覚えてるかな?
君は小学5年生の時の二分の一成人式で

『かっこいいお医者さんと結婚します‼︎』

なんて言ってみんなを笑わせたんだ。
僕単純だからさ、それを聞いた途端医者になるって決めたんだ。


だから高校の進路は看護科のある山城高校を選んだ
家から電車と徒歩で30分ほどの少し外れにある学校

ここに進むものはいなくて、人見知りの僕は正直高校には期待していなかったし、きっとなかなか友達もできずに終わるだろうなんてそんな事ばかり考えていた

僕はあまり学校が好きな方ではない。
いかないといけないからただただ行ってるだけで、楽しみだとか、友達に会いたいだとか思ったことなんて一度もなかった。

中学校の卒業式が終わり、高校の入試。

山城高校は他の学校に比べると地域では一番の学校で、偏差値も高かったから簡単ではなかったけれど、無事に合格することができた。

4月。
新しい制服を着ると、鏡に向き合い
『僕も大人になったな』
なんて思いながら、不安だらけだった胸の隙間に少し期待が膨らんだ

電車に揺られ、最寄駅に着いて
『桜綺麗だなぁ』
なんて、らしくない言葉を思い浮かべながら歩いていると僕と同じように桜を眺め、嬉しそうに微笑んでいる同じ制服を着た女の子がいた

『えっ…』

一瞬で気づいた。
僕の中の感じた所のないどこかに稲妻が走り、その場から動けず、声も出なくなった。
信号は青に変わり僕を避けて通る通行人の事など気にする暇もなく、僕はただただ驚いた

そう、あなただった。

落ちてきた桜を両手に持って満足げな顔をしたあなたはふいに僕の方を向いた

時が止まったかのようにその場の空気が僕と君だけの世界かのように

あなたは驚いた表情を取ると、両手に持った桜をヒラヒラの落としながら僕の名前を呼んだ

ねえ神さま
やはり運命の相手なのでしょうか
出会うべく人で間違いないのでしょうか

『運命なんてねえや』とアオハル蹴ったクリスマス
撤回させてください。

ねえ神さま
僕たちを何があっても離さないでください


こうしてあなたと再会し、僕のアオハルが芽吹いた