12月23日。この日もオリオン座が綺麗に輝いていた
あなたが死んだ。


あの日は雲ひとつなかった。3日後にクリスマスを控えた街は賑やかで、赤やら緑やら目をくらますほどの色付いた電気がそこら中を照らしだし、空に輝く星さえも気づかれない。誰も気づいていない。

あなたは星が好きだった。あの日も誰にも気づかれないオリオン座を見つけては嬉しそうに僕に言った

『見て!オニオン座‼︎私の背中のホクロみたい笑』

あの時に教えてあげればよかった。
あなたは昔からそうだった。『オニオン座』じゃなくて『オリオン座』なんだよ。
そんなことを言う時間さえも惜しんだ。だってそんなあなたが愛おしい。しっかりしてそうに見えてるけど、抜けてるんだよね。

2人で雪の上足跡を残しながら、お互いがお互いの手の温もりを分け合いながら、手の温もりだけでは物足りなくて。その夜はいつもより濃密に愛を確かめ合い、温もりを分かち合った。

病院で研修生だった僕は仕事で、寝ている君に軽く口づけをして午前4時。静かに家を出た。
これが最後のあなたのぬくもりだなんて考えもしなかった。

その日は帰りが遅い日で、それに手術の見学が入っていたため携帯を更衣室に忘れていたことさえ気づかなくて、バイブ音だけが更衣室のロッカーの中で震えて響いていたのだろう。何度も何度も。

それに気づいたのは1日が終わりかけの12時前だった

あなたからの着信が12件入っていた。
何があったのか、心のどこかがざわめきながらも電話を鳴らした。

『プルルッ…もしもし〇〇さんのご家族の方でお間違えないでしょうか?』

呼び出し音が鳴り終わる前にあなたとは違う声が受話器の向こうで聞こえてきた。

12月23日。この日もオリオン座が綺麗に輝いていた
あなたが死んだ。