「え、なんで?」



慌てて出て行こうとする私の腕をつかみ、不思議そうに首を傾げる晴琉くん。



そんな些細な動作にさえ、最近あっていなかったせいで免疫が薄れているからか、触れられたところから熱が広がっていくような気がする。



「えっと…なんでって、晴琉くんの練習の邪魔になりたくないなって」



「邪魔なんかじゃないよ。ここにいて?てか、むしろひなちゃんに会いにきたんだし」



「…え?」



「さっきのピアノ廊下で聞こえて、絶対ひなちゃんだって思って急いできちゃった」



久しぶりのその笑顔は反則だよ…。



なんというか眩しくて、直視できない。



プラス人見知りも発動し、思わず目が泳いでしまう。



「……え、えっと…」



「ねぇねぇ、さっきのってヴァイオリン協奏曲 ホ短調の第1楽章だよね?ひなちゃんヴァイオリンに興味あるの?」