ときどき後部座席の彼女の様子を確かめながら、濡れたコンクリートの上をひたすら進んだ。


薬が効き始めたようで、初めはすすり泣いていた彼女もいつしか眠ってしまったらしい。


鞄の中から彼女のスマートフォンを探し出し、適当な橋にかかったところで運転席から川底へと投げ捨てる。


ミラーに映る彼女の姿を目に入れると、無意識に口角が上がった。


……僕は君を愛し続けるから。


長い未来の老いの果てに、君が死んでしまっても。


人目を気にしながら向かうのは、僕が一人で暮らしている閑静なアパートの角部屋だった。


駐車場に車を止め、眠っていることを再度確認してからタオルやガムテープを時間をかけて剥がし、彼女の肢体を持ち上げる。


たとえ見られたとしても、そこまで気に留める人はこの辺りにはいないだろう。


この日のために空けておいた白い部屋のベッドに彼女を横たえ、細い両手首は手錠で、しなやかな足は縄で自由を奪う。


そのブラウンの瞳には、赤いサテンの布を被せて。


……起きた時、叫ばれたら困るな。


可愛らしい口に再びハンカチを咥えさせ、上から余ったロープを巻きつけた。


扉に鍵を閉め、車に置いてきた物たちを家に運び、ようやくひと段落がつく。


……コーヒーでも飲もうか。


粉末をカップに入れながら、僕は初めて触れた彼女の感触を思い出した。


柔らかで、滑らかで、艶やかな肌。


……彼女はいつ起きるだろうか。


ソファに座り、コーヒーを口に運ぶ。