気持ち悪いと思う?
でも僕は、比喩でもなんでもなく、胸が張り裂けそうなほどの痛みを感じた。
……次のデート当日、チアキに訊いたよ。
『もしかして、浮気してないか』って。
心臓が口から飛び出るかと思うほど緊張して、もしも認めたらどうしよう、って。
チアキはなんて言ったと思う?
……ふっ、と笑い声を漏らして。
『本当に愛されてると思ってたの?』って。
……そのときのチアキの顔を鮮明に覚えてる。
すごく楽しそうで、なのに何故か、黒い瞳の奥は泣いているみたいに静かだった。
彼女はうろたえる僕に向き合って、微笑みながら言ったんだ。
『いつ気づくんだろう、って楽しみにしてたの』
『あいつはあんたと付き合う前からの彼氏なんだよ』
って具合に。
友人が教えてくれたことは本当だった。
チアキにとって、僕との時間は暇つぶしも同然だったらしいんだ。
チアキは淡々と、僕を罵った。
『好きだとか愛してるだとか、そういうのばっかりでうざかった』
『付き合った理由?あたし、友達に自慢できるような顔が良い彼氏も欲しかったの。それだけ』
『別れてもいいよ?あんたがあたしのこと嫌いになったんならさ』
散々バカにされて、蔑まれて。
疑わなかった自分にも、母と同じ道を辿る自分にも腹が立って、溶けるみたいに消えてしまいたくて。
……それでも。僕は。
チアキのことが、好きだった。



