鍵を閉めたことを確認した僕は部屋に戻り、達成感にも似た思いに包まれる。
……やっと僕の沙奈を、柔らかな沙奈の身体を、この腕の中に抱きしめることができた。
僕にとってこれ以上に嬉しいことはない。
……あぁ、本当に僕は、沙奈を愛してる。
沙奈の声、沙奈の唇、沙奈の手足、沙奈の心、沙奈の言葉、沙奈の性格……全部、好きだ。
昼食は何にしようか。
いきなり環境が変わったから軽いものがいいかな。
そうだ、沙奈の好きなりんごはどうだろう。
彼女のために大きくて美味しいりんごをいくつも買ってあるから。
キッチンの棚に積んであるりんごを持ち出し、果物ナイフで丁寧さを心がけながら真紅の皮を剥く。
これを沙奈に食べさせたら、笑顔で頬張ってくれるのかな。
そう思うと嬉しさがこみ上げてきて、皮を剥いて八分の一にカットしたりんごを皿に積んだ。
数分離れていただけだけれど、それでも沙奈に会えるのはやっぱり嬉しくて。
部屋に向かい、扉を開けると、そこには手錠を外そうともがく沙奈がいた。
「……何をしてるんだ?」
「あっ……」
沙奈は僕の声に気づき、静止した。
沙奈の顔色から血の気が引き、その両手が硬く握られる。
「もしかして、逃げようとしてた?」
「し……してな……」
「そっか。ならいいんだ。りんごを持ってきたから食べなよ」
返事をしない沙奈に歩み寄ると、僕は食べやすく切ったりんごを右手で掴み、彼女の口に運んだ。
「ほら、口を開けて」
……沙奈は頑なに口を閉ざし、赤いりんごを食べようとしない。
唇につけてみたけれど、顔をしかめて口内に入れようとはしなかった。