「別に!あいつのことなんて!」
ガバッと飛び起きた。
夜も深く、母親からもう遅いんだから寝なさい、と半ば強引に寝かしつけられてわずか数分。
私は頭の中に浮かんだあいつの顔をかき消すように布団は脱ぎ捨てた。

「お前、寝癖ついてるぞ?」
「は?マジ?どこどこ!」
「知らねーw」
なんて会話をしながら学校に行く。割と近くに住んでいるから時間を合わせようとしなくても登校時間は被ってしまう。
小学校も、中学校も、高校すら同じの幼なじみ。
今まで1度も同じクラスじゃなかったのに、高校に入ってからはクラスも一緒だ。
「うちらまだかなーってずっと期待してるんだからね!お付き合いしましたーって言ってくるの!」
クラスメイトがからかうみたいに言ってきたのを思い出してしまった。
「おい?どうかしたのか?電柱ぶつかるぞ、あ。」
ガンッ!と衝撃が額というか、鼻というか全面に走った。
「ーーーーっ!」
「大丈夫かよ!?ほら、顔見せろって、鼻は?潰れてねーか?」
「潰れるわけな…い。」
顔が近い。
カッと顔に熱が集まるのがわかる。
あんなこと思い出したからだ!
恥ずかしくなって、ふいっと目をそらす。
「そっち向くなってほら、怪我してねーよな?前向け歩けよ?好きなやつの顔が傷だらけとか笑えねーから。」
「えっ?」
「だからーーー」

ぴびび、ぴびび、ぴびび!ぴびび、ぴびび、ぴびー
ガンッ!と手探りで探り当てたそれを思い切り叩いた。
目を擦り、今までのことを振り返る。
今のは夢?私、あいつと朝で、歩いてて…?
「ー!?」
ゆめ!?私あいつのこと夢に見たの!?
真っ赤になった顔をどうにかするため洗面所に行き、冷水を顔にかけた。

不覚にもきっと、今日は通学路で君に会っても顔を見れないと思った。