23話「1度きりの約束」




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 律紀は小学校低学年の頃から塾に通っていた。実家が田舎だったため学校が終わった後に
バス停に向かい、そこから1時間かけて町中の塾へ行っていた。
 バスの中でも勉強をすることにしていた律紀は、学校終わりにバス停で待つたった30分が律紀の自由な時間だった。

 いつも図鑑を持ち歩いており、教科書や塾にの教材にプラスして図鑑という大荷物を持っていた。
 けれど、今日は手に持った図鑑を見ないでポケットに入れている大切な宝物を取り出した。

 先日買ってもらったばかりのマラカイトのキーホルダーだ。


 「綺麗だなぁー。不思議な色だ。」
 

 律紀は、目をキラキラさせてその鉱石に魅了されていた。
 太陽の光を浴びて光る鉱石は、いつも以上に綺麗だった。

 ずっと憧れていた鉱石。
 それをやっとの事で手に入れる事が出来た。本当は加工されていない鉱石が欲しかったが、両親は「無駄なものに大金はかけられない。」と言って買ってはくれなかった。
 それで比較的に安価なキーホルダーにしたのだ。魔除けもあると知り、お守りにもなるだろうと両親も納得して買ってくれた。

 それでも、律紀にとっては大切な宝物で、それを毎日持ち歩き暇さえあれば眺めていた。


 「わぁー!綺麗な鉱石だね!緑色だー。これ、何て言うの?」
 「え………。」


 いつの間にか、バス停のベンチには知らない女の子が律紀と並ぶように座っていた。少し茶色っぽい髪を2つに結び、紺色のスカートに白のブラウスを着た、目が大きくて可愛らしい女の子だった。真っ赤なランドセルにはうさぎのマスコットが付いていた。それが彼女が動く度にゆらゆらと揺れていた。
 律紀より少し身長が高く、4年生ぐらいのようだった。

 律紀の持っていた鉱石に顔を近づけて、キラキラした表情で見つめていた。