21話「同じ気持ち」




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 律紀は、研究室で呆然としていた。
 先程の夢の泣き顔が頭から離れなかった。
  
 自分が泣かせて、そして悲しませてしまった。
 
 彼女が罪悪感を感じながら、契約恋人をしていたのは律紀も気づいてた。
 けれど、それを止められなかったのは自分の責任でもあると律紀は思っていた。


 律紀は、テーブルの上にある夢が置いていった光る鉱石を手に取った。
 小さなな小石のような鉱石。
 これだけが、夢と律紀を繋げてくれていた。
 それなのに、今は律紀の元にある。
 その瞬間から、この小石は光らなくなってしまったかのように、輝きを感じられなくなった。
 実際には輝くのかもしれない。けれど、律紀はそれを綺麗だと思わなかった。


 「夢さんがいないから……なんて、いなくなってから気づくなんて、バカだな。僕は……。」


 両手で大切な鉱石を握りしめ、律紀はギュッと目を瞑った。
 もう、アメリカに行かなければいけない。
 ここを出なければ飛行機に間に合わない。それがわかっているのに、体が動かなかった。


 その時、PCがポーンから音が鳴った。メールが届いた時に鳴る音だ。
 それを聞いて、律紀はすぐに立ち上がりPCの前に急いだ。

 メールの画面には「武藤空」と書かれていた。律紀が少し前から待っていたメールだった。
 
 内容は依頼されていた物が見つかったという事。そして、もう今日には帰国しており日本にいるという事だった。

 律紀はすぐにメールを送信し、すぐに会えると連絡した。


 迷いもしなかった。
 それで自分の気持ちが、律紀はよくわかった気がした。


 律紀にとって鉱石は大切な物であるし、好きなものだった。
 けれど、それは全てが彼女のためであるからだと改めて気づいた。


 今、アメリカに行く必要はないのだ。
 やらなければいけないことは、ここにあるのだから。


 律紀はすぐに支度をして、武藤空に会うために研究室を出た。