20話「雪降る道を」


 夢と恩人である空と絵里夫妻は、号泣した後に泣き顔のまま笑顔で日本料理を食べていた。

 夢は今どんなことをしているのか、そして武藤夫妻はどんな国へ行っているのか。
 事故の話をすることもなく、楽しい時間が過ぎていった。


 「そうなんですね。鉱石屋さんで、いろんな国で仕入れているんですね。」
 「そうなの。でも自由に飛び回れるから楽しいわよー。」
 「そうだな。鉱石からパワーももらえるし。」
 「いいですねー……実は私も鉱石大好きなんです。」



 偶然なのか、武藤夫妻も鉱石に繋がりを持っている人だった。
 夢の周りには鉱石好きが集まっており、とても不思議な気持ちになった。鉱石が呼んでいるのかとさえ、思ってしまう。


 「あ、そうです。この、マラカイトのキーホルダー、武藤さんたちの物ですよね?これがあ私の身代わりになってくれたみたいで。割れてしまったんですけど………。こんな素敵な鉱石を貸していただいて、ありがとうございます。」


 夢がスマホからそのキーホルダーを取り、頭を下げて感謝を伝えた。
 キーホルダーを空に渡そうとすると、夫妻はお互いに顔を見ながら驚いた表情を見せていた。
 
 「夢ちゃん、ごめんなさいね。それは私たちが渡したものではないと思うの。」
 「え………。」
 「私たちは、鉱石そのままのものをキーホルダーとかにすることはあっても、加工はしないと決めているの。採ってきたままを楽しんでもらいたいから。それは、ずっと変わっていないわ。」
 「そう。だから、これは僕たちが売っているものではないんだ。」
 「そんな……じゃあ、これは誰が?」


 夢の手の中にある、緑の丸い鉱石のキーホルダー。それは確かに人の手で加工されたもので、天然のままではなかった。
 
 そして、夢が昔から持っていたものではない。
 となると、夢は何故事故の後にこれを持っていたのか。
 考えようとしても、何も思い出せなかった。