次の日の仕事終わり。
 夢は、老舗高級料亭の「冷泉」に招かれた。女将が着物を来て挨拶をしてくれるような店で、少し古い日本庭園も見え立派なお屋敷のような店内だった。
 訪れたことのない雰囲気の店におどおどしながらも、夢は通された部屋に入った。
 すると、既に武藤夫妻は到着していた。



 「おぉー!夢ちゃん、大きくなったねー。そして、綺麗になった。」
 「本当ねー。でも、目元とか面影はあるわ。あの頃のまま可愛いわねー!」
 「空さん、絵里さん。初めまして。一七夜夢です。お会い出来て嬉しいです。」


 短髪に黒い肌、そしてがっちりした体型で豪快に笑っているのが武藤空。
 そして、細身で黒髪ロングをポニーテールにしている、切れ長の目が綺麗な女性が武藤絵里だった。
 2人は夢を見ると、久しぶりに会う自分の子どもように、すぐに近寄って夢を優しく抱きしめた。

 夢は初めて会う2人なのに、その温かい歓迎と体温で目がじんわりと潤んできた。
 メールや電話をしていたからはじめてとは思わないけれど、やっと会えたらという幸福感。
 そして、本当の両親のように心配してくれていた武藤夫妻の優しさに直接触れて、涙が出てきてしまった。


 「本当に、助けていただきありがとうございました……。」
 

 夢は抱き締められたまま、彼らに泣き声でそう言うと、ふたりの腕の力が更に強くなった。


 「いいのさ。君が生きていて、こうやって会えたんだから。」
 「そうよ。助けた私たちの方が幸せになったわ。」
 

 武藤夫妻のその言葉を聞いて、夢は更に涙を溢してしまった。


 再会してから数分で3人は抱き合ったまま、感動を喜び、そして泣いた。



 それは、感謝と幸せの涙。
 それを止める人は誰もいるはずもなかった。