だから、夢はこのマラカイトの鉱石が好きだった。それに感謝しているのだ。
 マラカイトが自分の壊してまで守ってくれた。ありがとう、といい続けたくて夢はこの鉱石を持ち続けていた。
 夢が緑色の鉱石が気になってしまうのは、昔の出来事のせいだったのだ。


 昔の事を思い出しながら、スマホについているマラカイトに触れてる。冷たい感触だけれど、何故か安心する。

 そんな夢に、律紀が何か言いたげに口を開いた。


 「………夢さん、それは……。」
 「え?どうしたの?」


 律紀の顔が強ばっていた。
 そして、先ほどまでは普通だったのに少し青白くなっているほどだった。
 夢は心配になって彼の返事を待った。
 けれど、その言葉の続きは聞くことが出来なかった。




 「律紀先生!失礼しますっ!」
 「……………望月………ノックしてから入ってくださいって何回言えば……。」
 「急用だったので!先生、これ、見てください!」


 前回と同じように突然、勢いよくドアを開けて入ってきたのは、律紀の生徒である望月だった。

 彼女はとても焦った様子で研究室に入ってくると、持っていたノートパソコンを律紀のテーブルの上に置いた。
 律紀にも夢にも見えるところに置いたので、夢も見てもいいという事なのだろう。


 「アメリカのニュースサイトでこれを見つけたんです。」
 「これは…………。」


 望月がクリックしたページが開くと、そこには大きな写真が載っていた。
 そこに写っていたのは、石のところどころからオレンジ色の光、鉱石だった。
 それもかなりの量だった。