「で、でも、律紀くんはが具合が悪いんだし、一緒に寝たらゆっくり出来ないでしょ?」
 「夢さんが作ってくれたご飯を食べたら元気になったよ。それにすごく熟睡できて、なんかすっきりしたんだ。」
 「…………そうなの?」
 「夢さんと一緒にいると寝れるみたい。」

 
 嬉しそうに笑う彼はとても純粋そのもので、律紀の言葉を聞いて嬉しくなってしまう。
 そこまで言われてしまうと、夢も負けてしまう。


 「ね、寝るだけだよ?」
 「それって、エッチな事はしないって事?」


 律紀の言葉に、夢は絶句してしまう。
 そして、顔を更に真っ赤にしながら精いっぱいの言葉を返した。


 「っっ………そうです!」
 「しないよ。約束する。それに僕も本調子じゃないし。」
 「…そうだよね。」


 ホッとしながらも、夢は彼を恥ずかしそうに見つめるしか出来なかった。

 すると律紀は、自分が入っていたふわふわの掛け布団を捲り、ポンポンと自分の横を優しく叩いて夢に向かって「どうぞ。」と促した。

 夢は緊張しながらも、彼の大きなベットに体を全て乗せて彼の隣に体を横たえた。
 彼の方を見るのはさすがに恥ずかしくて、反対の方向を向いてしまう。
 そこに律紀が布団を優しく掛けてくれる。
 
 それだけで、律紀との距離がとても近くなるのを感じ、夢はドキッと体を震えさせた。
 

 「温かい………でも、ちょっと恥ずかしいね。」
 「そうね………。」
 「じゃあ、電気消すね。」


 律紀はそう言うと、ベットの近くにあったのか、照明のスイッチを消した。
 一気に部屋が暗くなる。

 本当に律紀と一緒に寝るんだ。
 夢は、彼と自分の体温で温かくなる布団と、彼の吐息を感じながら、そんな事を思った。

 律紀は、抱き締めたり、夢に触れることはなかった。
 けれども、彼と同じ布団に入って眠ることが信じられない。
 本当の恋人のようだな、なんて思うと嬉しくなるけれどこれ以上胸を高鳴らせたら、彼にドキドキしているのがバレてしまいそうで、夢は小さく呼吸を整えた。


 「夢さん、おやすみなさい。」
 「…………おやすみ。」


 彼の優しい声がすぐ後ろから聞こえる。
 抱き締められていないはずなのに、それぐらい近くに彼を感じてしまう。

 その日夢が寝れたのは、夜が明ける少し前だった。