「ど、どうかなぁ?」
 「おいしいです!」
 「よかったぁー……。」
 「手作りなんて、何年ぶりだろう………すごくおいしい……。」
 「え………。律紀くん、どうしたの?」


 夢は、彼の顔を見つめて固まってしまった。
 彼の瞳から、涙が次々に流れていたのだ。
 

 「……っ!?僕なんで泣いて……熱上がってきたかな。」
 「律紀くん………。」


 律紀は涙を拭いて、隠すようにおじやを食べ続けた。それでも、時々また涙が溢れてしまっていた。

 夢には彼が泣いた理由がわからい。
 けれど、熱が原因ではないというのはわかった。
 彼は、何を思い出したのだろうか?それとも、我慢していたものがあったのだろうか?
 それでも、自分の前で泣いてくれたのは、少しは安心してくれていたからだと思うと、夢はホッとしてしまった。泣いている人を前に、そんな気持ちになるのは失礼かもしれないけれど、夢にとってはとても幸せな事だった。


 けれど、彼が悲しそうに泣くのは見ていられないし、どうにかして止めてあげたかった。
 夢はそう思うと、少し前の研究室での事のように、彼に向かって自然に手が伸びていた。
 そして、彼の頭を優しく撫でていた。


 「……夢さん?」
 「頭撫でられると、安心しないかな?……私はしてもらうの好きだったから。」
 「……………。」


 律紀は何も言わなかった。
 けれど、夢に頭をなでられるのを嫌がらずに、しばらく夢を見つめたあと、そっと目を閉じた。そして、その表情はとても穏やかだった。