11話「甘えてもいい?」



 夢は、あれからよく望月の事を考えるようになっていた。
 あんなに可愛い生徒から律紀は慕われて、好意を持たれている。自分より年下で、年も近くて、いつも一緒にいられる女性に「好き」と言われたら、律紀だって嬉しいはずだ。
 それに比べて、自分は律紀よりも年上で、契約恋人でしかない。それに、仕事にも自分にも自信がない。そんな女に比べたら、望月の方がとても魅力的だ。もし自分が男だったら、望月を選ぶだろうと思う。

 そう思っては、夢は更に自信をなくしてしまうのだった。


 あの日は、彼女が怒って部屋を出ていった後。
 律紀は、「すみません。悪い子ではないんだけど、僕の事あまりよく思ってないみたいで。」と、言って夢に謝ってくれた。
 彼は望月の気持ちをわかっていないようで「教師としてもまだまだだから、勉強しなきゃなぁ。」と苦笑いを浮かべていた。

 そんな律紀が彼女の気持ちを知ったら、どうするのか。
 それを考えると、夢は怖くなってしまった。




 モヤモヤした気持ちを抱えたまま、次の研究室へ行く日が近づいた。
 いつもならば、早くその日にならないかと心待ちにしているのに、今回は少し憂鬱だった。
 また、望月に会わないだろうか。
 律紀との関係は進展してないだろうか。

 日が経つにつれて、不安は増すばかりだった。