10話「鋭い視線に隠れた本心」



 

 デートの帰り。
 お店から出ると、律紀は少し緊張した面持ちで、夢の手を取った。


 「映画でこういう風に手を繋ぐシーンがあったから。これは夢さんは好き、かな?って。」


 そうやって不安そうに手を握りしめてくる律紀がとてもいとおしく感じ、夢は胸がキューっと締め付けられる気持ちになった。

 律紀が右手の鉱石のために頑張ってくれている。それはわかっている。
 考えてしまうと、契約の恋人だと改めて感じてしまうのだ。
 それの事実を隠すように、夢は律紀の手を強く握り返した。








 その日のデートから律紀の対応は少しずつ変わっていた。
 毎日のメッセージの内容が挨拶以外のものを書いてあるようになっていたのだ。
 律紀が考えてメッセージを送ってくれた内容に詳しく返信をしていくうちに、やり取りが何度も往復するようになった。彼は忙しいのに申し訳ないと思いながらも、返信がくる度に夢はドキドキしながらメッセージを見ていた。
 返信がくるのを心待ちにする日々が続いた。



 今日は夢が律紀の研究室に行く日。初デートの日以来の、律紀と会える日だった。
 その日は夢が住んでいるところでは珍しい雪が降るぐらい寒い日だった。
 そんな日は当たり前のように、夢の左腕が動きにくくなる。仕事はなんとかこなせたものの、夢の疲労感はいつもより多かった。


 「夢さん、先日はありがとうございました。」
 「ううん。こちらこそ、映画に付き合ってくれてありがとう。嬉しかったわ。」
 「これ、また使って。今日は一段と寒いから。」


 律紀が差し出したのは、車の中で律紀が夢に貸してくれたブランケットだった。来る途中、腕だけではなく足元も冷えていたので、夢はありがたくそれを借りることにした。