「あの。ずっと気になっていたのですが………….。」
 「はい?」


 2人がコーヒーを飲んで気持ちを落ち着かせた頃。
 律紀が、少し遠慮がちに話をふってきてくれた。

 
 「夢さんの方が年上なのに、なんで敬語なんですか?」
 「え…………それは、会ったばかりの人ですし、大学教授の方だから、ですかね?」
 「大学教授とかは関係ないですよ。それに会ったばかりだけど、恋人同士なんですよね?」
 

 律紀は不思議そうな表情で、そう訪ねてきた。
 確かに年下の相手で、しかも恋人なのに敬語は可笑しいかもしれない。


 「じゃあ、敬語は止めた方がいいのでしょうか?………恋人同士なら律紀さんも止めてくれますか?」
 「わかりました。普通に話しますね。」
 「…………はい。じゃあ、よろしく?」


 突然敬語を使わないというのは、恥ずかしくなってしまう。けれど、きっとここで変えなければずっと敬語のままになってしまうのは、よくわかっていた。
 夢はドキドキした気持ちを押さえながら、たどたどしく普通に声を掛ける。


 「はい。よろしく。」
 「律紀さんは………。」
 「あ、夢さんは僕にさん付けじゃなくていいよ?」
 「え……なんでです……じゃなくて、なんで?」
 「年上だから。さん、以外で好きに呼んでみて。」
 「えー…………そんな急に呼び方まで変えなくても……….。」
 「いいから、ね。」