律紀の研究室に行くのは週2回になった。
律紀の講義やゼミの都合もあり火曜日も金曜日の仕事終わりに決まった。
予定がない日でも、律紀はしっかりとメッセージをくれていた。
そして、もちろん金曜日であるこの日の朝も。
夢は朝貰ったメールを見ながら、大学に向かう電車に乗っていた。
「おはようございます。今日はよろしくお願いいたします。」という、恋人らしさもないメッセージ。
だけれど、彼から来たメッセージだと思うと、自然と顔が緩んでしまうのだ。
彼の研究室の前に立ち、夢は大きく深呼吸をした。そして、バックから鏡を出して身だしなみをチェックしていた。
「夢さん、こんばんは。」
「…………っっ!律紀さんっ…。」
「今日もありがとうございます。寒いですから、中にどうぞ。」
どこかに外出していたのか、いつの間にか彼は夢の後ろに立っていたようだった。
鏡を見ているのを見られたのかと、夢はドキドキしつつも、律紀は気にしてないようだったので、ホッとした。
「今日も1つ鉱石を選んでください。コーヒー入れてきますね。」
「ありがとうございます。」
研究室に入ると、律紀をそう言ってコーヒーの準備をしに離れてしまう。
契約だとしても、恋人同士になった相手を前に、夢は緊張してしまったけれど、律紀は前回と同じような冷静な様子だった。
彼はやはり本気ではなかったのかな?と思うと、少しだけガッカリしてしまう。
目の前の鉱石を見つめていても、今日は何だか心ここにあらずで、ただボーッと見つめてしまうだけだった。