「す、すみません。………つい、夢中になってしまって。」
 

 律紀を無視して、鉱石に夢中になってしまった事がとても恥ずかしくなってしまい、夢はすぐに鉱石がたくさんある棚から離れた。
 けれど、律紀は笑いもせずに、ニコニコと夢の様子を眺めている。


 「夢さん、やっぱり詳しいですね。鉱石好きだなんて、嬉しいです。」
 「ごめんなさい。こんな素敵な鉱石をたくさん見たことがなくて。」
 「見てて貰ってもいいですよ?」
 「いえ………今日の目的は違うので。まず、見てもらわないと。」


 夢はそう言って、自分の右手に視線を送る。
 律紀は「そうですね。」と、言いながら嬉しそうに笑っていた。


 「では、飲み物を準備しますので、好きな鉱石を選んでください。それを見ながら飲みましょうか?」
 「……いいんですか?」
 「もちろん。コーヒーでいいですか?」
 「はい。ありがとうございます。」


 そう返事をすると、夢はすぐに鉱石の棚へと向かった。そして、ひとつひとつ眺めているうちに、ある物に目が行く。深い緑色をした1つの鉱石に手を伸ばした。


 
 その鉱石を眺めていると、律紀が両手にコーヒーカップを持ちながら「こちらのソファにどうぞ。鉱石も一緒に。」と声をかけてくれた。
 夢はドアの手前にあるソファに、律紀と向かい合うようにして座った。


 「すみません。あまり整理されていないもので。」
 「いえ。私の担当だった先生はとてもすごい部屋だったので。律紀さんの研究室はとっても綺麗だなーと思っちゃいました。」
 「ここはお客さんもくるので、なるべく綺麗にしろと生徒が綺麗にしてくれていて……普段はもっと酷いですよ。」


 律紀はそう苦笑しながら、コーヒーを一口飲んだ。夢も、「いただきます。」とお礼を言ってからコーヒーを頂く。調度いい酸味でとても飲みやすいコーヒーだった。