その気持ちを抑えることが出来ず、夢は頬を染めて微笑んでしまっていた。
 

 「私も鉱石が好きなので、そう言って貰えると嬉しいです。」


 そう笑顔で律紀に返事をしてしまっていた。
 すると、彼は少し目を開いて驚いた表情を見せたけれど、それはすぐに微笑みに変わっていた。そして、「いえ……。」と、視線を逸らして何故かはにかんでいた。


 「鉱石がお好きなんですか?」
 「………きっと律紀さんに比べたら知識はないし、ただ見ているだけが好きなだけなんですけど。加工されていない、鉱石を少しずつ集めて眺めるのが趣味なんです。あ、本当に小さいものばかりですよ!……見ているだけなんて、恥ずかしいですね。」
 

 彼は鉱石の研究者だ。
 ただ眺めるだけが趣味と聞いて、嫌な気持ちにならないか、それが心配だった。
 
 すると、「そんなことないですよ。」と律紀は笑った。


 「僕は鉱石を仕事にしてしまいましたけど、元は夢さんと一緒で眺めるのが好きだったんです。もとは星が好きだったので、そのキラキラしたものが鉱石にはあるみたいだって、子どもの時に感じて。だから、暇な時間は、鉱石を眺めています。」
 「………そうなんですね。いろいろ調べるのがお好きなのかと思いました。」
 「それも好きですけど、そのままの姿を眺める方が、パワーをもらえる気がしませんか?」
 「はい。わかります!」


 その言葉に強く共感してしまい、夢は思わず大きめな言葉で返事をしてしまった。それに気づいた時はすでに遅く、律紀はクスクスと笑っていた。
 

 「一緒ですね。」


 そして、彼は今日1番優しい声でそう言ってくれた。
 その微笑みは、年上かと思った落ち着いたものとは違う、とても幼くて無邪気な物だった。
 彼のそんな顔を見て、夢はドキリとしてしまい、思わず右手を引っ込めた。


 「すみません!ずっと手を握っていて。」
 「いえ………大丈夫です。」

 
 夢はテーブルの下で、ギュッと右手を握りしめた。彼の熱がまだ残っているようで、右手だけがとても熱くなっているように感じられた。


 「あの、もしよかったら。右手の鉱石をもっと見せてもらってもいいですか?」
 「………えっと、それはここではなくって事ですか?」
 「はい。大学の研究室に来ていただけないかな、と思いまして。もちろん、仕事終わりとか休みの日でかまいません。」
 「でも………。」
 「仕事場までお迎えにもいきますし。あ、研究室にある鉱石を見ていただけると思います。」
 「………鉱石。見たいです、ね。」
 「では、決まりですね。」