けれど、隣でギシッというベットが軋む音と、布団が擦れる音がした。
 夢が目を開ける前に感じたのは、抱き締められているという事だった。
 律紀の体温と肌の感触が、伝わってきて夢はすぐに目を開ける。


 「おやすみなさいって挨拶するつもりだったんですけど………やっぱり我慢出来ませんでした。」
 「り、律紀くん……。」


 体を引き寄せられてから抱き締められたので、向かい合うように体が彼と密着していた。
 耳元に聞こえる彼の声は、いつもより艶があるように聞こえたのは気のせいだろうか。

 律紀の言葉の意味は、言わなくてもよくわかる。
 恥ずかしい気持ちもあるけれど、自分を求めてくれる彼が愛しくて仕方がなかった。

 夢が自分から律紀の胸に顔を擦り付けるように寄せると、律紀の体が少しだけ固まった。けれども、そこから早い鼓動が伝わってきて、夢は安心した。
 彼もドキドキしてくれている。自分だけではないとわかった瞬間から、夢は少し気持ちが落ち着いた。


 「ねぇ、律紀くん。」
 「はい……。」
 「キスしてほしいな……。」
 「僕もしたいんですけど、してしまうと我慢出来なくなりそうなんです。………我慢出来るだろうって思ってたんですけど、やっぱり好きな人と一緒になるとダメですね。僕も普通の男みたいです。」
 「………さっき、律紀くんは律紀くんのままでいいって話したでしょう?だから、律紀くんがそう思ってくれたの話してくれて嬉しいし………その、私だって好きな人に求められるの、嬉しいんだよ?」


 きっと小さな光だけでもわかってしまうぐらい、自分の顔は赤いのだろうと夢は思った。
 とんでもない事を言ってしまっていると自覚していた。
 どうして彼の前だと、恥ずかしいことでも言ってしまうのだろうか。
 そう考えると答えは1つしかなかった。

 律紀が好きだから。
 彼が好きだから、自分からも彼を求めてしまう。呆れられたり、嫌われたりするかもしれない、という考えも飛び越えて、自分の気持ちをぶつけてしまうのだ。
 
 そんなにも夢中になるぐらいに、夢は彼が好きなのだと、自分でも驚くぐらいに律紀に惹かれていた。