26話「純粋すぎる誘い」





 しばらく夢と律紀は本当の恋人になった時間を堪能していた。
 どんなに触れていても罪悪感がなく、ただたた幸せな時間。夢は信じられない気持ちでいっぱいだった。


 もっと律紀に抱きしめて貰いたかったけれど、夢のお腹がそれを許さなかった。ロマンティックな雰囲気の中、お腹が鳴ってしまい、空腹だとバレてしまったのだ。
 律紀はそんな夢を笑ったりもせずに、「すみません。こんな時間なのにご飯も食べないで………お腹すきましたね。」と言ってくれた。


 律紀が準備してくれた中華料理に夢が簡単なスープを作り、2人でご飯を食べた。
 そんな些細な時間でさえも夢は幸せを感じてしまっていた。


 「少し気になっていたんだけど、律紀くんって敬語の方が話しやすいの?」
 「…………あっ、そうですね。夢さんに敬語じゃなくて言いっていってしまったのに。すみません……本当は敬語の方が楽なんです。」


 そう言って苦笑した。
 確かに敬語なしで話してもらえると、仲がもっと良くなったと思える。けれど、彼が敬語以外で話すと、夢はどことなく違和感を感じていたのだ。
 こうやって、敬語で話す方が、夢は伸び伸びしているように感じていた。