悟(さとる)と出会ってから1年が過ぎた。
春の風が吹き、私の心をつれていく。
「ねぇ。私と出会って1年になるね。
私といて楽しかった?」
私はボソッと呟いた。
すると、
「楽しかったよ。
こんな僕を好きになってくれたこと…
たとえ、僕と君が触れられなくても…
そばにいるだけでとても嬉しかった。」
そう透明で消えそうな悟が言った。
そんな悟を見て、抑えてたはずの涙がこぼれた。
「なんで、こんな出会い方したんだろう。
グスッ 悟とはこんな形で出会いたくなかった…。」
私は幼い頃から幽霊が見える体質で
一人暮らしするときに引っ越した部屋にいたのが
その部屋で心臓発作で死んでしまった悟だった。
絶対に幽霊なんて好きにならないって思ってたのに
自然に悟の優しさに惚れて好きになった。
幽霊が彼氏なんてバカバカしいと思われるかもしれないけど
それでも、それでも、好きになってしまったから。
「ごめんね。僕が彼氏で…
ぎゅっと抱きしめてあげたかった。
そっとキスして愛を確かめたかった。
もう、僕は消えてしまうけど……
空であの高い綺麗な空で君のこと見守り続けるよ。
ずっと…ずっと…
愛してる…………」
最後に触れることのできない唇で私の頬に
そっとキスをして、消えていった。
ポロッ 涙が溢れてきた。
「私も…私も、悟が彼氏で良かったよ……
これからもずっと愛してる。
だから、ちゃんと私を見守っていてね…」