平安時代末期。この頃の平安京(都)では、歌を唄うことが流行っていた。唄うことと言っても俳句を詠むことを指していた。かの有名な人物もこういったことに、影響を受け有名になっていたという。
「銀色に染まりし外に波の花」
と歌った人物がいる。その人は、名を「伊予」といった。彼女は、17歳と若かったが歌を作る才能だけは、玄人並であった。
そのため宮中の中ではあっという、間に噂が広まり天皇陛下から、位を授かった。
また位を貰い受けた時には、1人の貴族に嫁いでいたために侍女、お付の人や宮中の中では「伊予の方様」や「御台様」と呼ばれていた。
「御台様。お体の調子は、いかがでしょうか」
「大丈夫よ。未風。」
御台様(伊予)は、この時お腹に命を宿していた。もう少しで臨月といったところに来ていた。そのため実家から着いてきた侍女「未風」は、心配をしていた。それもそのはず、都では季節が冬(霜月)でありこの季節に生まれてくる子は、ほとんどが命を落としてしまうことがあった。
「あっ!動いてる。元気に育ってるのね。」
と御台は、我が子の胎動を感じ安心をした。
そして未風は、御台に
「お名前ってお決まりになられましたか?」
と聞いた。
「まだ決めてないわ。生まれてきてから考えることにしてるから」
そう答えた。
翌月(師走)のとある午後。御台は、元気な姫君を産んだ。御台は、子に「珠」と名付けた。その子は、玉のように透き通った肌と目をしていたという。
「旦那様、目のあたりが似ております。」
「ああ。ありがとうな、伊予」
仲がいい事で評判であったために宮中の人達は、皆2人に祝福をした。
珠には、乳母が着くこととなり、御台は、乳母選びをしていた。乳母候補者は、5人おり御台は、その中から「珠朱(すず)」という名の人物を選んだ。選ばれた理由としては、親戚に陰陽師がいたからであった。
「珠朱と申します。御台様。」
挨拶を交わした後に、御台は、珠朱と未風と共にに我が子が寝ている部屋へと歩みを進めた。
『チラチラと振りし小粒は雪の種』
部屋へと向かう途中に雪が降ってきたのでその様子をみて、御台は1句読んだ。
「御台様のお作りになる歌は、なんか不思議な力を感じます。」
と珠朱は、言った。
「幼子の時から、父上母上からよく言われていたわ。」
と会話が終わる頃には、珠がいる部屋へと着いた。部屋に着くとすぐに珠朱は、部屋に呪術をかけた。
「御台様、安心してください。これからは、邪気が近づかないので、姫様も大きく育ちますよ。」
と珠朱が言うと御台は、珠を腕に抱いた。珠は、泣かずに静かに寝ていた。
「御台様、お世話になります。」
「よろしく頼みます。珠朱。」
とこの日から珠朱は、珠のいる部屋で一緒に寝ることとなった。
「姫様は、御台様と同じ綺麗なお人になられますよ。」